PHとKHの関係(KHの役割)

PHとKHについては、ネット情報やYouTubeを見て広範囲で混乱しているお客様からの質問が多いので、PHを下げたくない大型魚水槽の場合とPHを弱酸性で安定させたいソイル水槽の場合に分けて説明します。

PH(ペーハー)は水中の水素イオン(H⁺)濃度を表しています。KH(炭酸塩硬度)は主に水中の炭酸水素イオン(HCO₃⁻)の量を表しています。

KHの数値はKHテスターで測定します。試薬を滴下して色の変化した滴数がKHの値です。(3滴で色が変化したらKHは3になります)

KHの値とCO₂濃度でPHが決定するという三者の関係はありますが、ここではPHとKHに絞って進めていきます。また、PH安定剤に使われるリン酸ナトリウムやリン酸2水素カリウムなどの薬品類は「入っていない」という前提です。

水槽飼育でPHを安定させる管理は必然です。酸性になったりアルカリ性に傾いたりPHが定まらないと簡単に弱ってしまいます。

そこで活躍するのがKH(炭酸塩硬度(HCO₃⁻))の存在です。水道水や湧き水にはある程度KHが含まれていますが、私が知る範囲の日本の水ではKH1~KH3がほとんどなので飼育水としては低目と思います。

水槽内に酸性原因の水素イオン(H⁺)が増えるとPHは酸性に傾きますが、KH(HCO₃⁻)と反応して水(H₂O)と(CO₂)に変化してPHの変化を防いでくれます。

逆に、水槽内にアルカリ原因の水酸化イオン(OH⁻)が増えると水素イオンが減少してアルカリに傾きますが、KH(HCO₃⁻)と反応して水(H₂O)と炭酸イオン(CO₃²⁻)に変化してPHの変化を防いでくれます。

このようにKH(炭酸塩硬度(HCO₃⁻))があると、酸に対してもアルカリに対してもPHの急変を防いでくれます。ですので緩衝度やアルカリ度とも呼ばれています。ただし、水槽内では消費される一方なので注意が必要です。

KH(炭酸塩硬度(HCO₃⁻))の値は高いほどPHも高くなると言う方も見受けられますが、そうではありません。PH7.0~PH8.0付近で留まろうとします。

例えば、淡水の大型魚など餌を多く与えている環境で、酸化させる常在菌や硝化菌を利用している水槽では、濾過によって時間とともに水素イオン(H⁺)は増えていきますが、KHのお陰でPHは緩やかに下がっていきます。ところがKHを消費しきったとたんにPHは急降下します。

すると目が白くなったり餌を食べなくなったりします。「急に」とか「突然」と思うかも知れませんが、自動車に例えるとKHはブレーキパット(シュウ)の役目です。徐々にすり減っていき、無くなった瞬間、突然ブレーキが利かなくなります。そうならない為に、早めの点検と同じく早めの水換えやサンゴ砂などを使った対策も有効と思います。

ソイルを使っている水槽の場合

KHはどう影響するのかについて。

ソイルと言ってもアマゾニアの様にアンモニアが発生するソイルの場合は、次の亜硝酸も検出されなくなるまで濾過システムによって幅はありますが、1ヶ月から3ヶ月掛かります。なので、立ち上がる前にKHは無くなっているはずです。(アンモニアが亜硝酸に硝化されると水素イオンが放出されます。その水素イオンによってKHは消費され、無くなります。)

M87ソイル水槽でエビアンと南アルプスの天然水を使ったレシピの場合、徐々にPH下がり、2日間でPH5.5前後まで下がって安定します。

この2日間は、M87ソイルの酸成分の影響で水のKH(炭酸塩硬度)が消費されるまでの時間です。KHが0になった時点でソイル都合のPHで安定します。

淡水の大型魚水槽では緩衝力として働きますからPHを安定させるためにはKHの数値が高い水が管理もしやすいです。逆に弱酸性にするソイル水槽では抵抗勢力になってしまいますから、KHの数値は低い方が扱いやすい水ということになります。

市販されている多数派のソイルではPHを下げきる能力が低いため、足し水や水換えでも、わずかなKHを消費できず、PHが安定するまで時間が掛かり、特にシュリンプは具合も悪くなります。その場合はピートを使ってKHがゼロになった時点で足し水するか、RO水にKHが上昇しないミネラルを添加して使えばPHが不安定にならずに済みます。

M87ソイルやM87ソイルと特性の近いソイルなら、日本の水で足し水する程度では(例外もありますが)PHはほとんど変化しませんから、M87ソイルをお使いのお客様はKHを気にする必要は無いかもしれません。ですが、水の性質を知る上では基礎的な部分です。